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「すべて」が現場につながる②
-知りたい!シミュレーションのコツ-
前回に引き続き、京都橘大学看護学部でシミュレーション教育に携わる野島敬祐先生とマルティネス真喜子先生にお話いただいています。
今回は、実際のシミュレーション教育で行われている具体的な工夫について伺いました。
京都橘大学 インタビューシリーズ
【第1回】「すべて」が現場につながる①
【第2回】「すべて」が現場につながる② (★この記事です)
【第3回】シナリオ作りとそのゴール
徹底した事前学習
授業で得た知識を活かすには?
マルティネス 授業レベルでの知識は持っているはずなんですけど、それがいざシミュレーションや実習の場になるとうまく引きだせないというのはやっぱり課題としてあります。授業とシミュレーション前の事前学習をうまくつなぐことができれば、もっと効果的にシミュレーションができるだろうなって。
野島 知識としてあってもすぐに行動が伴うかっていうと、やっぱり伴わない。でも、知識は存分に与えたうえで臨まないと、行動には繋がらない。答えを教えるくらいの知識を与えて、その知識をもってどう動くか、動いたところでどう考えるか、っていうのを意識した教育をしていますね。
授業とシミュレーションを「つなぐ」事前学習の工夫
野島 事例紹介ではただ紙を渡すだけじゃなくて、映像コンテンツで見せて、こういう患者さんですよっていうのは提示しています。あと、うちの特徴としては、授業毎ではなくてすべての学年で、色んな授業を通して同じ事例を使う。
マルティネス 『河田さん』という人が、2年次の授業ででてきて、また3年次での授業でもでてきて。
野島 だからもう、その事例の人はうちの大学では有名人なんですよ(笑) 学生も、ああ、亢進症のあの人か、って出てくる。そこまで頭に残ったうえでやっていくというのはとても大事かなと。
マルティネス あとは、3年次の実習に行く前のシミュレーションでは、行動計画を記録用紙に書いてくるというのをしてますね。やっぱりある程度、行動のプロセスが自分の頭の中にないと、行動が単発になるので。『血圧』『体温』って、繋がらないまま行動してしまう。そこで、行動計画として行動の根拠を事前に書いてくるようにして、自分がなにをするのか、なぜこれをするのか、という思考の整理をしてきてからシミュレーションに臨むようにしています。この段階で、かなり教員が関わるようにしている。
野島 準備はしっかりしないとシミュレーションが効果的にできないっていうのは共通認識としてもっているので、その紙面の段階から関わっていますね。
マルティネス シミュレーションをする前の段階で、学生の思考のプロセスについて「計画立ててきたけどこれ実施できる?」とか、「何を知りたいからこれをするの?」といったようなツッコミを入れる。そこで「あ、自分はなにをするために今からこういう行動をするんだ」というのを理解する段階を踏んで、行動に移してもらうことはしています。授業からいきなりシミュレーションではなくて、行動計画をきちんと立てて、根拠も整理したうえでやる、という風な穴埋めをしていますね。
いざ!シミュレーション
ファシリテートは気張らずに!
野島 私たちは1回の講習ではなくて、ずっと知っている学生にシミュレーション教育をするので、普段からの関わりも意識するようにはしています。ふだん怖い先生がファシリテートのときにいきなりニコニコしだすと怖いので(笑) 学生をほめたりとか、笑顔で接するとか、そういう存在にしておかないと、シミュレーションの時に引いてしまう。
マルティネス そうそう、普段と変わらない感じでシミュレーションをやるっていう。
野島 シミュレーションだけじゃなくて普段の授業もそうです。
マルティネス 気張りすぎないというか、やるぞー!じゃなくて、普段の感じで。
野島 基本としてはブリーフィングからデブリーフィングまで4~5人のグループでしています。シミュレーションは1人ずつ。でも学生の案で2人でやったこともありました。デブリーフィングの中で、「これは2人で援助したほうがいいんじゃないか」という考えが学生からでたら、それはそれで実行してみるべきだと思うんで、「じゃあ2人でやってみようか」って。時間についても、基本的に5~10分で終わらせるというのがシミュレーション教育のベースだと思います。
デブリーフィングは学生が主役
学生に能動的に参加させる
野島 できる限り『発声させる』『発言させる』というのは意識していますね。消極的な学生に対しても、例えばシミュレーション後のデブリーフィングをするときに、意見が出やすいように知恵入れを先にしておくとか、気づきを先にアドバイスしておくとか。あとは、質問の仕方を変えて、簡単に答えやすい質問にするということもしています。
マルティネス シミュレーションをしたら失敗するしうまくはいかないんだけれど、それをデブリーフィングの時に、グループで考えて解決をしてもらうような方向にもっていく。教員が簡単に答えを言わないようにして、みんなで考えてもらって、どうしたらいいか話し合ってもらう。もちろん方向がズレていったときには助言はするけれど、基本的にはどうしたら良くなっていくのかというのは、学生が考えるように持っていくほうがよりよいですね。
京都橘大学は、国際、人文、教育、社会、医療系の幅広い分野が集う総合大学です。二〇〇五年四月、関西の四年制私立大学でもいち早く設置された看護学部では、充実した教員陣と独自のカリキュラムにより九一七人の卒業生を輩出。自らの知性や感性を磨き、倫理観を養うことで看護の本質を究め「人によりそう看護」を実践できる看護職者を養成しています。また、大学院看護学研究科博士前期・後期課程を設置し、新たな看護を創造できる研究者・教育者・管理者や高度な看護実践者を育成しています。
野島 敬祐 先生
京都橘大学看護学部 専任講師 |
マルティネス 真喜子 先生
京都橘大学看護学部 専任講師 |