- ストーマケア
- 皮膚・排泄ケア
- 排泄援助
排泄することに問題をかかえ
生活している人を支える在宅看護
~ストーマケア~
今回は京都橘大学看護学部で実施されたストーマケアの授業*に潜入してきました!
同大学では、「皮膚・排泄ケア」の認定看護師さんが、自身の臨床経験を活かして学部生にストーマケアについて授業を行っています。
*2022年度の指定規則改正で、3.排泄援助技術「12.ストーマ管理」の到達度レベルが引き上げられ、モデル人形もしくは学生間で、「ストーマケアの演習の実施」が必須となりました。
※この記事は「看護師等養成所 教材カタログ2023年度版」に掲載の記事をWEB用に書き起こしたものです。
生活スタイルに合わせたストーマケアを
2022年初夏、看護実践の応用を目的とした京都橘大学の「生涯健やか看護学・看護学演習」で、学生約100名を対象にストーマケアの授業が行われました。授業を担当するのは、皮膚・排泄ケア認定看護師の多田千和子先生です。
メインテーマは、『退院後に社会復帰を目指すストーマ保有者自らストーマ管理ができるように、看護師がどのように関わるか』…知識と技術の両側面からストーマケアについて学ぶという構成です。
1|授業の概要
- 対 象 :看護学部3年生
- 人 数 :94名(2名1組で計47ペア)
- 時 間 :90分(講義:30分/演習:60分)
- 講 師 :10名
2|講義
術直後のストーマケア
「術直後のストーマケアの主体は看護師です。」と、多田先生。術後の患者さんは侵襲による創痛や疲労を抱えており座位がとれないことや、創部の清潔操作など的確なケアが必要だからだそうです。また「技術面のみならず、患者さん自身のストーマの受容(心理面)に向けた関わりが重要です。」といった看護ならではの視点が印象的でした。
在宅復帰時のストーマケア
次に、ストーマ保有者の在宅復帰時の、看護師の関わりで重要なポイントについて…『ストーマ保有者が就労している場合や家族が同居している場合など、それぞれの生活スタイルに配慮してケア計画を立てること』とのこと。また、在宅では病院と異なり物品が潤沢でないため、ガーゼがない場合にはクッキングペーパ―で代用するなど柔軟なケアが求められる場合もあることがわかりました。
ストーマ装具の交換方法
洋式便座を使う場合に、(ストーマ保有者自身が)どのように排泄物を廃棄したらよいか? 粘膜損傷など、具体事例を交えて装具交換のポイントを伝授。最後は、動画で実際の流れを紹介し、演習前のイメージづくりが整いました。
3|演習
講義後は、別教室で演習が行われました。密を避ける感染対策と、より丁寧な指導のため、3つの教室に分かれ、指導者も各教室に配備。
「面板のサイズはこれでいいかな?」「この体勢だと皺ができて洗浄しにくい」と言った様子で、戸惑いながらも90分間で看護師役と患者役の両方を体験することができました。
この演習で必要な物品や、細かい授業の流れやコツは無料ダウンロードできます。
認定看護師教育課程×学部教育がもたらすシナジー効果
「生涯健やか看護学」「生涯健やか看護学演習」と呼ばれる、学部3年生を対象とした看護実践の授業では、認定看護師が指導にあたっています。この認定看護師教育課程と学部教育のコラボレーションが、シナジー効果をもたらしています。
特長
- 高度実践看護職を育成している認定看護師教育課程の教員が授業を担当
- 学部生にとって、より専門的・実践的な質の高い学びの機会になっている
波及効果
- 認定看護師に限らず、将来のキャリアアップを考える契機となっている
- 授業を受け持つ教員は、常にアップデートした実践内容を共有することで、生きた『FD』が実現
- 産学連携のロールモデルになった
先生方より
【私たちが普段関わっている研修生は皮膚・排泄ケア認定看護師を目指す現役看護師ですが、看護学部の授業はフレッシュな学生の感性に触れることができる貴重な機会になっています。 これまでの演習では、自作したものや硬い素材のストーマケアモデル、人形タイプのシミュレーターを使用していました。今回開発されたストーマケアモデルは、肌部分の素材が工夫され、装具の貼り剥がしや疑似便を使った排出動作をリアルに体験することができます。また、腹部に装着することで臨場感があり、新たな排泄様式で生活しなければいけない患者とそれを支える看護師、双方の役を経験することで演習効果が高まると感じました。】
製品指導
多田 千和子 先生
京都橘大学 看護教育研修センター 准教授 皮膚・排泄ケア認定看護師 |
中務 直美 先生
京都橘大学 看護教育研修センター 講師 皮膚・排泄ケア認定看護師 |
学校紹介
京都橘大学 京都橘大学は、2022年に学園創立120 周年、大学開学55周年を迎えた、21世紀にふさわしい男女両性の《自立》と《共生》をめざす大学です。看護学部は2005 年に、京都の4年制私立大学初の看護学部として設置されました。 豊かな人間性と生命への畏敬の念をもち、人類愛と異文化理解の視点から看護を創造的に実践し、それにより社会に貢献できる人材を養成することを教育理念としています。 |
認定看護師教育課程 皮膚・排泄ケア分野: 京都橘大学看護教育研修センターは、皮膚・排泄ケアの認定看護師の教育機関です。「医療、介護のあらゆる場で、WOC(創傷・オストミー・失禁)ケアを必要とする対象者に対し、高度な専門知識と熟練した看護技術を用いて水準の高い看護実践ができる看護師、チーム医療においてリーダーシップを発揮できる看護師を育成する。」を理念に、認定看護師の育成を行っています。 |
編集後記
橘大学さんでは「日常生活でストーマ装具を付けて生活する体験」も行っているとのこと。装具の中に紙粘土等の模擬便を入れたものを、腹部に直接貼付して数日間過ごし、ストーマ保有者が感じる困難や、心理面について少しでも理解を深めてもらいたい、というねらいだそうです。限られた授業時間の中で教えられることには限りがありますが、この様な工夫で教育効果を最大限に高められていると感じました。
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今回使用した教材は… 使いやすさとシンプルさの両立を目指しました 演習内容に応じてストーマの種類や位置を変更可能 装着時の「一体感」前屈した時の「皺」を再現 模擬便が付属しており、リアルな演習が実施できます 詳細はコチラ! |