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医学・看護のシミュレーション教育情報をお届けするWEBマガジン

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シミュレーション教育を用いた院内看護教育の仕組みづくり(後編)

こんにちは、WEB管理担当のウエハラです。
前回に引き続き、三菱京都病院 看護師長 矢野諭美氏にお話を伺います。今回はシミュレーション教育のもたらすメリットや面白さについてです。

*この記事は「新人看護職員研修 教材カタログ2022年度版」に掲載の記事をWEB用に書き起こしたものです。

シミュレーション教育の良いところは?

考えて行動できること

 昔より現場が忙しくなりマンツーマンで教えるのが難しくなった一方で、1 年生でも求められてることが増えてきました。今はクリニカルパスや電子カルテがあり、考えなくても看護の” 処置” はできるシステムになってきています。当院の考えでは、自ら考えて行動するように教育はしてるんですよ。でも1 年生は自分で考えて行動することがなかなかできません。シミュレーション教育ならただ行動するだけではなくて、考えて行動できます。なぜそう思ったのかをみんなで考えていくことで自分の行動を次に似たような事象があったときにアセスメントできるスタッフを育成できると思ってます。


指導側の教育につながること

 もう一つ、取り入れて良かったのは、指導側の教育につながることです。例えば、デブリーフィングで1 年生が突飛なこと言ってるなと思っても、なるほどと言って一緒に驚いたり深掘りしたり褒めてあげられるんですよ。1 年生の思いを汲んで褒めるというのも指導側のトレーニングだと思ってます。もし教えて間違ったら、怒りたくなっちゃうけれども、シミュレーションだったら間違ってもいいですし。どうやって1 年生を怒らずに正しい知識に持っていくかを現場のスタッフにどんどんやらせてます。

 とはいえ、指導者全員のスキルが上がっているかというのはなかなかでして、ここは悩みどころです。ただ、今の若い子たちは学校でシミュレーション教育受けているので、今後自分が指導側に立ってシミュレーション教育を行うことをわかってると思います。なので、先輩看護師の方が大変でしょうね。これからもっと院内教育は変わるんじゃないかなと思ってます。

シミュレーションの内容を検討する教員たち

院内で行うシミュレーションの面白さとは?

今日やったことが明日現場で起こるかもしれない

 消化器外科病棟の新人教育で、術後出血のシミュレーションを実施したら、ほどなくして教育を受けた子が本当に術後出血の場面に遭遇したんですよ。その後、「シミュレーションした時と状況が似てたよね、あなたはどう動いたの?」と、指導側ももう一度振り返れたので良かったねとスタッフと話してました。 シミュレーションでは1 年生がわかりやすいように先輩看護師たちが現場と似た設営をしてます。そこに病院ごとの特徴が出ると思います。

ホワイトボードに観察内容を記入する看護師       

院内シミュレーションの様子

今後の展望は?

もっと効率的・効果的な教育に

 院内教育においては、実施するのは現任教育長に移譲しているので、私としては次のステップに行きたいと考えていて、他のご施設さんの新しいことを取り入れたいと思ってます。あとは、ラクしたいんです。日々の現場の患者様の応対がある中で、1 年生たちに教育する余力がないので、どれだけ効率的・効果的に教育するかが課題です。教育は手を抜いたら質が落ちるので、ラクしたいということはラクしてはいけないことの裏返しですけど。

学校の教育との連携

 あとは、基礎教育と附属の看護学校、学校をもたない当院のような病院がどう連携して、継続した卒後教育を行うかを考えてます。毎年1年生の特性が違うので、その子にあった教育をして臨床にどんどんなじませて、質の高い看護師を大きな計画で育ててあげるというのが本当に大事だと思ってます。なので、基礎教育を行う教員の方々とどのように連携をとるかと、次に入ってくる1年生がどういう特性をもった子たちかというリアルな情報をキャッチすることが課題ですね。



以上、三菱京都病院 看護師長 矢野諭美氏にお話を伺いました。「毎年毎年やり続けること」という力強いお言葉が印象的でした。お忙しい中取材にお応えいただきありがとうございました!

Writer's Portrait インタビューご協力
看護師長 矢野 諭美氏(写真左)
副看護師長 現任教育長 都木 和子氏と一緒に
学校の外観 施設情報
三菱京都病院は、1946年10月に三菱重工(自動車)の福利厚生施設として設立された企業立病院です。開設当時より、社員とその家族だけでなく、地域社会に開かれ地域住民に貢献する中核病院として尽力してきました。三菱京都病院の使命は、高度であたたかい医療をご提供することです。そのために、優れた医師・職員による丁寧な医療の実現と多職種が参加するチーム医療の実践に、日々努力を重ね、高度急性期医療に特化し、地域に信頼される医療を提供していきます。


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