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新人看護師研修向け シナリオシミュレーションの“いろは”②


新人看護師研修向け シナリオシミュレーションの“いろは”

医療シミュレーション教育の理論的背景 田中 宏治 先生
ひめマリアによるシミュレーションの実施過程 松村 直 先生(★当記事です)
ひめマリアによるシミュレーションの事例 松村 直 先生


ここからは、松村先生からシミュレーションの実施過程について順を追ってご紹介いいただきます。

“ひめマリアによるシミュレーションの実施過程”

松村 直 先生

シミュレーション教育の位置づけ

松村先生: 看護師はベッドサイドで沢山の不確定要素に出会います。「知っているけどできない」ことが出てくると、不適用やリアリティショックにつながってしまいます。そこで、知識技術の統合を行うためにシミュレーションを行います。

教育のフロー
画像:ポイントのアイコン

シミュレーションを行うには、知識技術をしっかり身につけていることが大前提

ひめマリアにおけるシミュレーション実施過程

事例 「環境整備のシミュレーション研修」

1、シミュレーションの立案と目標設定

松村先生:シミュレーションを立案するには、現場に直接課題をヒアリングを行います。

シミュレーション教育の企画立案の流れ 病棟師長へのヒアリング
病棟師長のイラスト

病棟師長

最近若い子の総合力が落ちてて、患者さんからクレームが出てるのよ。

[画像:男性アイコン]

松村

どういうところにケアの力が落ちているように感じますか?

病棟師長のイラスト

病棟師長

新人たち、環境整備もできないのよね。最近は看護補助者さんが、ベッドサイドの掃除をしてくれるから、環境なんて見もしない。この間も、半身麻痺の患者さんが移動の時に転んでしまって…。

[画像:男性アイコン]

松村

確かに、環境面でのクレームが多くあるようですね。では、シミュレーションで環境整備を考える機会をつくりましょう。

病棟師長のイラスト

病棟師長

うちは、混合病棟で、いろんな患者さんが入院するしADLが低い人もいるから…。

[画像:男性アイコン]

松村

でしたら、「患者さんの特性に合った環境が考察できる」というのが大きな目標になりそうですね。

画像:ポイントのアイコン

目標設定がとても大切!
目標とは、学習者に、どんな能力を身につけて欲しいかということ

2、研修の計画

松村先生:新人看護師は、環境整備に関する「知識」については学校教育で身につけているはずなので、自分たちで自由に発想させれば問題解決できると考え、看護の改善点を出してもらい、実際に環境整備をしてもらう研修にしました。


  • 時 間:研修2時間  1シミュレーションあたりの時間:5分
  • 対 象:新人看護師3~4名/回
  • 指導者:1名
  • 課 題:ADLが障害されており、これから離床やリハビリが必要な患者さんの環境整備、看護の改善点を討議
  • 設 定:模擬病室を散らかしておく
  • 備 考:この研修では病態理解までは必要ないと病棟より指示があったので、難易度の高くない患者設定にした

環境整備のシミュレーション研修風景

模擬病室の様子

3、シナリオ作成
シナリオシミュレーションシートの準備

松村先生:ひめマリアでは、1シナリオにつき5種類のシートを準備しています。

  1. 研修全体の概要
  2. シミュレーション中の患者の変化と期待する(新人看護師の)動き
  3. 準備物品と配置
  4. 振り返り時のファシリテータの質問内容
  5. 研修全体の流れ
シナリオシートのイメージ画像

シナリオシミュレーションシート

市販のシミュレーションテキストに掲載されているシートを活用してもOKです。

画像:ポイントのアイコン

シミュレーションシートの必要性
1、支援者同士(指導者)で、目標やシミュレーションで大事にしたい部分を共有するため
2、シミュレータの場合はバイタルサイン等の数値設定のため
3、模擬患者(SP)さんの場合、演技指導のため

4、リハーサル

松村先生:シミュレーション教育で大切なのは、入念なリハーサルです。以下の方法があります。


アルファテスト:指導者が学習者役となってシミュレーションを行う
ベータテスト:学習者に近い想定をしたシミュレーションを行う

実際のシミュレーション中にトラブルが起こると学習者の集中力が下がり、学習効果が低下してしまいます、そのためリハーサルが重要です。リハーサルを行うことで、シナリオを修正することもできます。

5、シミュレーション

松村先生:以下②~④を3~4回繰り返し、全体で2時間の研修となりました。

  1. オリエンテーション:課題や、使える資源についてレクチャー
  2. シミュレーション1:5分間で、環境整備を実施する
  3. 振り返り(デブリーフィング):学習者自身の看護の改善点を示してもらい、課題の解決方法を抽出してもらう
  4. シミュレーション2:振り返りで出た解決方法を元に再度実施。
ブリーフィングの様子

オリエンテーションの様子

環境整備のシミュレーション中の様子

環境整備のシミュレーション中の様子

6、研修の評価

松村先生:評価方法としてはアンケート、学習者の目標の達成度合いの聴取、事後テストなどがありますが、研修後に、新人看護師さんの様子を現場の師長さんに直接聞きにいくことが多いです。現場で実践できているか、変化があったかを確認します。シミュレーションで学んでも、現場で実践する機会がなければ、そのスキルは身につきません。

松村先生のアイコン画像

松村

シミュレーションを実施してみて、新人看護師の様子に変化はありましたか?

病棟師長のイラスト

病棟師長

新人たちは、ずいぶん患者さんの個別性について考えることができるようになったみたい。でも、やっぱり先輩や指導者も環境整備ができないのがわかってきた。先輩看護師たちにもシミュレーションをやってもらわないといけないわね。病棟でもできるかもしれないからシナリオをもらってもいい?

画像:ポイントのアイコン

一番重要なのは、シミュレーションが、臨床で役に立ったかどうか、部署目標と合致していたかどうかということ

まとめ


  • 実施よりも、準備と評価に力を注ぐ
  • シミュレーション教育は、教育者のアプローチよりも学習者の目標達成に導く「環境をつくる」ことが重要


真摯に現場の声に耳を傾け目標設定を行い、新人看護師さんのレディネス(準備性)を冷静に判断してシミュレーションの企画をされているところ…感服いたしました! 最終回は、松村先生によるシミュレーションの「実例」が盛り沢山の内容です。

Writer's Portrait 講師紹介:松村 直 先生

ひめマリア チーフトレーナー(看護師長)
大阪府立看護大学(現大阪府立大学) 看護学部を卒業
大阪の急性期病院勤務を経て、姫路聖マリア病院看護部 教育師長
2015年より現職/看護師・保健師



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