- シミュレーション
- 医学教育学会
シミュレーションをどう取り入れるか
~主体的な学びを促進するために~
第51回日本医学教育学会大会 共催セミナーレポート
7月26日、第51回日本医学教育学会大会にて、共催セミナーを開催いたしました。京都府立医科大学の山脇正永先生を座長に迎え、日本医学教育評価機構(JACME)常任理事の奈良信雄先生と愛知医科大学医学部シミュレーションセンター講師の川原千香子先生にシミュレーション教育についてご講演をしていただきました。
猛暑の中、大変多くの方にご参加いただきまして、まことにありがとうございました。 講演の中から一部内容をご紹介いたします。
グローバル時代におけるシミュレーション医療教育
主な講演内容
- 医学教育改革の動向
- 海外先進諸国におけるシミュレーション医療教育
- シミュレーションを用いた学生の評価
奈良先生には、卒前・卒後・生涯教育をいかにシームレスにつないでいくかという内容をご講演頂きました。そのために臨床実習・臨床研修を充実させること、そして安全かつ効果的に行うためにシミュレーションが重要であることを強調しておられました。
また、各国の医学教育の現場を見てこられた中で、現在のトレンドとして「学修成果基盤型教育」、「統合カリキュラム」、「診療参加型臨床実習」などを挙げられ、海外の医学教育で「教員が教えて学ぶのではなく、学生が自ら学修することを促進することが重要視されている」といったことをお話しいただきました。
主体的に学ぶシミュレーション教育のしかけ ―愛知医科大学での取り組み―
主な講演内容
- シミュレーションセンター開設から4年の経過
- 医学卒前教育へのシミュレーション教育導入の紹介
- Inter Professional Education(IPE)導入の工夫
川原先生には、前半の奈良先生のご講演を受けて、いかに愛知医科大学でシミュレーションを取り入れてきたか、具体的な事例を交えながらご講演いただきました。2015年に現職の愛知医科大学に着任されてから、様々な取り組み・試行錯誤を行って、着実にシミュレーション教育を学内で広め、深めていっている様子が分かる内容でした。特に、実習の準備教育にシミュレーションを取り入れておられる点、IPEをどのように行ったかなどは、写真や動画を交えてお話しいただきました。
2つの発表において共通の話題 「学修者が主体的に学ぶ」
お二人の発表の中で共通していたのが、「学修者が主体的に学ぶ」ことの大切さでした。そのための方法のひとつとして奈良先生は「パフォーマンスレベルに応じた学習方略、評価法の設定することによって学習が促進される」ことを、川原先生は「急変対応だけでなく基礎医学や1,2年生からの「早期実習に、目標を設定してシミュレーション教育を取り入れることによって、学生の主体性が増す」ことを、具体例を交えてお話されていました。
共催セミナー参加者の声
ランチョンセミナー参加者のアンケートでは下記のような声をいただきました。
グローバル時代におけるシミュレーション医療教育
世界の状況を概観していただき、改めて現在を俯瞰して、シミュレーション教育の方向性に気づいた
日本と海外で事情は異なると思いますが、海外のシミュレーション教育の現状を知ることで、日本の教育の改善に役立つと思いました
主体的に学ぶシミュレーション教育のしかけ
~愛知医科大学での取り組み~
積極的に取り組んでおられることが大変わかりやすかったです。学習者が主体的に学ぶ医学・IPEシミュレーション教育の重要性を認識いたしました
とてもわくわくして、当学でもこのくらい丁寧で実践的な教育を行えるとよいなと思いました。とても勉強になりました。
最後に
医学教育において、シミュレーション教育を積極的に取り入れ、効果的な教育を進めていく必要性がある中で、どのようにカリキュラムを制定し、環境を整えてきたのかという奈良先生のお話と、実際に現場で取り組んでこられた内容を具体的に説明していただいた川原先生のお話は、「まさに”今”、医学教育改革が起こっている」、という実感を多くの方に感じさせるものであったと思います。また、「学修者の主体性は、適切な評価をすることで促進される」という内容については、医学教育のみならず、一般的な場面や仕事においても役立てられる考え方と感じ、とても印象に残りました。
セミナーにご参加いただいた皆様、山脇先生、奈良先生、川原先生、ありがとうございました。みなさまにとって、今後のヒントになれば幸いです。
SimSimWEBでは引き続き、シミュレーション教育についての情報をお知らせしていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。