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CVCセミナー「解剖を理解し、確実な手順・方法と合併症対策を身につける」(前編)
こんにちは!SimSim担当のナカです。
京都科学では医療教育で医療事故を減らすことを目標としてCVCシミュレータを開発し、その普及に取り組んでいます。
今回はCVC穿刺手技への理解を改めて深めるため、開発にご協力頂いた 杏林大学医学部麻酔科学教室 教授 徳嶺譲芳先生を講師にお招きし、社内でオンラインハンズオンセミナーを開催しました!
CVC穿刺ってどんな危険があるの?オンラインでハンズオン?
白熱したセミナーを2週に分けてレポートします!
今回は講義編。それでは、どうぞ!
※本記事は社内教育を目的として行ったセミナーのレポートであり、手法を教授することを目的としたものではありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
【セミナーの流れ】
- 10 min. 講義
- 10 min. デモンストレーション
- 30 min. ハンズオン
- 10 min. 質疑応答
-CVCとは?-
CVC(中心静脈カテーテル)は、栄養管理や多剤薬剤投与、中心静脈圧測定のために主に鎖骨下静脈、内頸静脈、大腿静脈から挿入するカテーテルのことです。今回はカテーテルを挿入する前段階の、中心静脈への穿刺をレクチャーしていただきます。
講義 CVCの基本手技について
CVC穿刺における医療事故の事例
まずは解剖と、エコーガイド下でのCVC穿刺手技で起きやすい誤穿刺の事例を確認します。
CVC は日本での医療事故の中で、発生率が一番高いんです。
こちらは、鎖骨下静脈穿刺を短軸交差法で行うつもりが、針が深部に達して気胸を起こしてしまった例
図1図2:鎖骨下静脈穿刺の短軸交差法での失敗1)2)
エコー画像の中の白い点が針。シャフト(針の軸部分)を針先と見間違えたことが原因です。
そしてこちらは、鎖骨下静脈穿刺を長軸平行法で行うつもりが、鎖骨下静脈を貫通して動脈に穿刺してしまった例
図3:鎖骨下静脈穿刺の長軸平行法での失敗3)
短軸像で見ると、動脈に針先が侵入しているのが分かります。(画像B)
これらはどちらともエコー画像では順調に見えるにも関わらず、実際は誤った位置に針先が進んでしまった例です。
CVC穿刺時の事故を防ぐ3つのポイント
このような盲点を回避するために重要なのが、「ロジカルに考え、正確に行う」こと。必要なのは以下の3点だそうです。
感覚ではなく、理論で攻略していくんですね!
では、実際どのように手技に落とし込んでいくのでしょうか?
2次元画像(エコー)をもとに3次元を構築する
まずはエコーの走査。Sweep and Swing法を用いて、血管に沿ってSweep(血管に沿ってプローブを滑らす)、血管に垂直にSwing(肌との接着面を支点に羽のように振る)で血管の位置を確認し、3次元で脳内にイメージします。
図4:血管走行を確認するためのスキャン4)
血管の走行方向があっていないとSweep時に、血管に対して垂直に置けていないとSwing時に、血管が画像の中心からずれてしまいます。
こちら、話だけ聞くと少し難しく感じるんですが、実際にプローブを動かしてみると「なるほど!」と理解ができました。
穿刺針の位置を知る
そして次は穿刺。針の進みすぎや誤った方向への侵入がないか確認するため少しずつ針を進めます。穿刺→針先がエコーに映ったらプローブを進行方向にすこし滑らせる→針を進める→プローブを進める、を繰り返して、常に針先の位置を把握します。
図5:針先の確認法5)
ビーム(エコーの撮像面)を針先が追いかけていくイメージ、とのこと。
スペースの関係で今回は割愛しますが、平行法ではプローブを血管と平行に置いたら、片目をつぶるなどの方法で、目線とエコーの撮像面と針の進行方向を一直線にすることが大事なんだそうです。
図6:平行法(3 step method)3) 6)
スナイパーのように片目をつぶり、平面を捉えて狙いを定めることです。
なんとなくイメージが掴めてきました!
次回、いよいよデモンストレーションと実践に移ります。
後編の更新は6月28日。お楽しみにお待ちください!
講師
杏林大学医学部麻酔科学教室 教授 |
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出典
1. 徳嶺. 医療機能評価機構CVC講習会スライド(2020年)
2. 徳嶺. 「最も安全で確実な超音波ガイド下中心静脈穿刺」『Novellus』,日本コヴィディエン株式会社, 2013年発刊vol.6, (図1より抜粋)
3. Tokumine J, Lefor A T, Yonei A, et al. Three-step method for ultrasound-guided central vein catheterization. Br J Anaesth. 2013; 110(3): 368-73. (Fig.1 改変)
4. 徳嶺. CVCインストラクターズ・ガイドver.3(図6, 7を改変)http://jams.kenkyuukai.jp/special/?id=7184 (2021年6月9日閲覧)
5. 徳嶺. CVCインストラクターズ・ガイドver.3(図11を改変)http://jams.kenkyuukai.jp/special/?id=7184 (2021年6月9日閲覧)
6. 徳嶺. CVCインストラクターズ・ガイドver.3(図12, 13を改変)http://jams.kenkyuukai.jp/special/?id=7184 (2021年6月9日閲覧)