- 新人看護教育
- シミュレーション
- 合同研修
シミュレーション教育による人材育成
後編:シミュレーション研修事例_Part2
島根大学医学部附属病院クリニカルスキルアップセンター センター長 狩野 賢二
今回は、2回に渡りお届けした島根大学医学部付属病院クリニカルスキルアップセンターのシミュレーション教育による人材育成の事例紹介の最終回となります。
この記事では、当施設で実施された新人看護職員研修の模様をご紹介いたします。
シミュレーション教育による人材育成
前編:クリニカルスキルアップセンター紹介(5/30掲載済)
中編:シミュレーション研修事例_Part1(6/8掲載済)
後編:シミュレーション研修事例_Part2(★当記事です)
*この記事は2023年度 新人看護職員研修 教材カタログに掲載された特集をWEB用に再編したものです。
4.島根県看護協会主催多施設合同新人看護職員研修
平成22年4月1日より新人看護職員の臨床研修が努力義務となったことから、厚生労働省によって新人看護職員研修ガイドラインが策定され、研修体制として新人看護職員が少ない施設や小規模病院等においては外部組織の活用が記載されており、研修方法にもシミュレーション教育が推奨されています。
クリニカルスキルアップセンターは、島根県全域におけるシミュレーション教育の一環として、島根県看護協会主催の多施設合同新人看護職員研修にも平成24年から協力しています。
当初は、BLS、呼吸音聴診、心音聴診、採血、経管栄養、吸引、導尿を2日間で、指導者4名によって受講者32名の実習を行いました。
その後、平成27年からは、患者急変のシナリオを実施するために1日追加して3日間を2回として、指導者6名で受講者が117名になりました。この時の受講者から「患者さんの前では疑問に思っていることを口に出すことができないけどシミュレーションを行うことでその場で理解することができてよかった。」、「心音聴診のシミュレーション研修は、内容が難しかったけど臨床ですぐに活用してみることができそうで興味深く学んだ。」、「急変時はいつも緊張し、具合が悪くなるので苦手意識があったが、積極的に動くための自信が少しついて非常にためになった。」などの感想が寄せられました。
5.コロナ禍における新人看護職員研修
多施設合同新人看護職員研修は、令和2年からコロナ禍によりクリニカルスキルアップセンターでの開催が困難になったため、出雲市内の会場で1回14名の少人数で2日間のコースを2回実施して参加者を28名に限定しました。
研修内容は、シミュレータの実習で密にならないように手技ごとに動画コンテンツを活用しました。また、令和2年から同4年はコロナ禍が続いておりSim-INT、INT-ADV、INT-Netの開催も困難になった。しかし、病院の研修開催が困難になったということは、看護師養成学校における実習も思うようにできなくなっておりコロナ禍で卒業した新人看護職員は例年以上の不安があったと思います。そこで、従来はクリニカルスキルアップセンターで他施設の新人看護師研修は受けていませんでしたが、臨床経験2年未満の新人看護師を対象とした地域医療者研修を実施しました。この研修は、各病院単位で個別のオリジナル研修として令和3年に8施設から24名、令和4年は7施設から37名の申し込みがありました。
また、Sim-INTの代わりに1回で完結する指導者研修を年3回実施して、令和3年に15施設から75名の参加があり、令和4年は17施設から55名の受講者がありました。新人看護師研修および指導者研修の何れも、研修開始14日前から島根県内に滞在し感染リスクとなる行動をとらないこと、および、受講2週間前から健康管理票を記入するなどの感染対策を行ったうえで1回当たりの受講者人数を6名までとして研修時間も3時間以内としました。
このように、コロナ禍では対面で行うシミュレーション教育には制約が多かったのですが、オンラインまたはオンデマンドによる医療手技の教育は受講者の反応を十分把握できない事から、シミュレーション教育に代わるものでなく補助的手段だと思われました。
令和5年になりコロナ禍の状況も変化していますが、少人数制のシミュレーション教育、および動画の活用などは、感染対策だけでなく教育効果も高いことから今後もこのような研修は継続すると思います。
全3回に渡りお送りした、島根大学医学部付属病院でのシミュレーション事例はいかがでしたか?みなさまのご施設でも共感できる部分や、これから実施したいと思う内容が沢山つまったレポートだったのではないでしょうか。狩野賢二先生、詳細なレポートありがとうございました。
講師紹介:狩野賢二 先生
島根大学医学部附属病院クリニカルスキルアップセンターセンター長 |
|
施設情報
島根大学医学部附属病院クリニカルスキルアップセンターは、医学生、看護学生などの医療系学生、研修医、医師、看護師、薬剤師、検査技師などの医療専門職を対象に、医療に関する様々な技能トレーニングの機会を提供します。 |
この記事はダウンロードしていただけます