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昭和大学が目指す 日本一!世界一!の
カリキュラムづくり(前編)
昭和大学医学部では、「日本一のカリキュラム」を目指して、2020年に医学教育を大幅に改革しました。2021年度にはシミュレーションセンターも開設しました。そこで今回は、そのカリキュラム改革の要となる医学教育学講座に所属されている泉 美貴先生、川原千香子先生、土屋 静馬先生にお話を伺いました。
*この記事は「新人看護職員研修 教材カタログ2022年度版」に掲載の記事をWEB用に書き起こしたものです。
カリキュラム改革の概要
昭和大学医学部は、2020年からの新カリキュラムより、「医学は患者から臨床の現場で学ぶ」を信念に、1年次より臨床技能の習得を開始しました。2年次からは、看護実習、多職種実習を経て、週に1日は1人で各科での臨床実習に臨みます。4年次後期以降はスチューデント・ドクターとして、4週間を単位とする診療参加型臨床実習を行います。2年次から4年次の授業は、「基礎・臨床統合教育」として学び、知識はオンデマンド講義で自学自修し、大学ではディスカッションやシミュレーションが中心のアクティブ・ラーニングを実施しています。
インタビュー
Q1. 昭和大学は2020年に実施された「日本一」を目指すカリキュラム改革や最新設備を盛り込んだシミュレーションセンターの開設など話題に事欠きません。まずは、「日本一」を目指す新カリキュラムのポイントを教えていただけますでしょうか?
泉先生:とにかく「臨床中心」であることです。従来のカリキュラムは4年の後期からやっと臨床実習が始まりましたが、新カリキュラムでは1年次から医療面接やバイタル、身体診察の演習を始めます。2年の後期~4年の前期には週に1度、全科ローテーションの日を設けていて、早いうちから臨床に触れさせ、そこから医学に必要な知識・技能および態度を学ぶカリキュラムになっています。
土屋先生:まずは水に慣れさせて、泳ぐ意味を理解させ、その上でどう泳げば早く泳げるか学ばせる教育、とでも言いましょうか。教室の学びと臨床現場での学びが並行して進んでいくんです。
学生の変化はありましたか?
泉先生:全く違います。まず、モチベーションが違います。早くから医師の姿を見る機会があるので、自分がどんな医者になりたいか将来のゴールを具体的に描くことができます。日々の学びがつながる先が見えてくると、学びの本気度は変わってきますね。もう一つ、新カリキュラムの学生は患者中心の視点を持っています。普段から教科書ではなく患者から学んでいるため、常に患者のために何をするべきかを考えています。学生のうちから、頭の中が臨床中心で回転しているんです。
ひとりで取り組むということ
川原先生:今の学生は本当に臨床慣れしていますよね。
泉先生:低学年のうちからたった1人で臨床現場に行く。自分ひとりの責任で食らいついていく経験が、鍛錬になっていると思います。現場の先生からは、今の学生は「課題をきちんとやってくる」「緊張感がある」「よく質問する」、それに「よく挨拶する」なんて言われることも…!これは驚きの変化でしたね。
土屋先生:一方で、臨床では頑張る新カリキュラムの学生も、出欠を取らない授業ではとたんに出席率が下がることもあります。責任を持って取り組むことが学修態度の変化に繋がっていると思います。
川原先生:ひとりで取り組むことで、学生が「どうすればいいか」を考えるようになりますよね。私は今年から昭和大学に赴任したんですが、1人で臨床実習ができるのは、伝統的にチーム医療や学部連携教育をしっかり教えているからこそだと感じています。医療人を育成する上で、個人学修とチーム学修のバランスは大切な部分だと思います。
実習受け入れ側も好意的に
Q2. 2年の後期から臨地実習が始まるとのことですが、受け入れ先の負担はどうですか?
土屋先生:できるだけ減らすように心がけてはいますが、負担はもちろんあると思います。受け入れ先の普段の様子を学生が見学する実習方式にして、評価もできるだけ複雑にならないよう工夫しています。加えて、受け入れ先全科に教育担当者を設定し、定期的にミーティングを実施しています。当初は現場からの猛反発を覚悟していましたが、今のところご協力いただけていますね。
泉先生:むしろ、やる気のある人を相手にするのは楽しい、という歓迎ムードで。嬉しい誤算でした。
川原先生:知識が少ないという思いが、学生を謙虚にさせていると思います。学ぶ側が一生懸命だと、教える側もサポートしたくなりますよね。
ひとりで取り組む鍵は、信頼すること
Q3. 新カリキュラムに変わって、学生との関わりで意識していることはありますか?
泉先生:「信頼すること」。この一言に尽きると思います。以前アメリカ人の講師に、なぜ海外では1年次から臨床実習をするのに、日本ではそれができないのかと聞いたことがあるんです。答えは単純で、「やらないだけ」と。その時、スッと腑に落ちたんです。
川原先生:「学生だからやらなくていい」とか、「できない」とか、教員が勝手に思い込んでしまうんですよね。
泉先生:私たちが、責任を取るという覚悟さえあれば、初年次からでも学生たちに挑戦させることができるのです。
土屋先生:一方で、実際に学生が何を体験しているか、というのは確認が必要なので、授業の中で振り返りの仕掛けづくりや、学生の個別の質問に対応できる体制づくりは意識しています。
先生方、ありがとうございます。後半はアクティブ・ラーニングを行うための教育の形や、新設のシミュレーションセンターの役割についてお話しいただきます。
次回は4月14日公開予定。お楽しみに!
取材ご協力:昭和大学 医学部 医学教育学講座 教授 泉 美貴 先生(写真中央) 准教授 川原 千香子 先生(左) 准教授 土屋 静馬 先生(右) | |
昭和大学 創立者である上條秀介博士の「国民の健康に親身になって尽くせる臨床医家を養成する」という願いのもとに設立された、医学部・歯学部・薬学部および保健医療学部の4学部からなる医系総合大学です。建学以来受け継がれてきた「至誠一貫」の精神を体現し、真心を持って国民一人ひとりの健康を守るために孜孜として尽力することを本学の使命としています。 |