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現場の指導力を上げる!
看護実践力の向上に取り組む沖縄のシミュレーション教育【前編】

沖縄県内でシミュレーション教育に関心のある有志で活動している「看護実践力を育む研究会」。そのメンバーの一人である社会医療法人友愛会 人事部人材開発課 課長 池田晴美氏と、現場で指導されている友愛医療センター 看護部 教育担当統括師長 洲鎌陽子氏に、看護実践力を育む研究会(以下、研究会)と院内の看護教育についてお話を伺いました。

※この記事は「新人看護職員研修 教材カタログ2021年度版」に掲載の記事をWEB用に書き起こしたものです。

研修のデブリーフィングの様子

看護実践力を育む研究会 とは?

 2012年に地域医療再生基金事業の一環としておきなわクリニカルシミュレーションセンターが設立されました。当時、センター設立と運営のため5年間、県内に在住されていた阿部幸恵先生(現:東京医科大学医学部看護学科学科長)のお力添えもあり、看護基礎教育や臨床の看護師指導者育成にシミュレーション教育を取り入れることができました。先生が東京へ戻られてからも交流は続いており、県内でシミュレーション教育を更に進めていきたいという思いをもった県内の有志で、2016年に「沖縄の看護実践力を育む研究会」を立ち上げ、参加者を募り、年3回の研修を開催しています。

研究会の様子

看護実践力を育む研究会のメンバーとオンライン研修会の様子

 研究会は、阿部幸恵先生、冷水育先生(東京医科大学病院シミュレーションセンター助教)を講師に迎え、効果的なシミュレーション教育を学んでいます。参加者は臨床の指導者や看護教員など、活動しているフィールドの違うメンバーですが、「看護とは?」「看護力を高めるための育成は?」など看護観や看護実践について深める場にもなっています。

池田氏写真

当施設からも複数名参加し、参加後は「新人のトレーニングに参考になる」「先輩や指導者の関わりが重要」「教えているつもりが、業務タスクだけになっていることに気づいた」など、大いに刺激を受けているようです。

研究会について

Q.シミュレーション教育に興味を持った経緯をお聞かせください

経験から気づきを与える教育

池田氏: 看護学校で指導していた時に、3年生を対象としたシミュレーション教育を阿部先生と当時の学校長で進められていた中になぜか巻き込まれて(笑)知識と実践力を統合した形で、経験の中から気づきを与えることができる教育だと感じました。国試対策のシミュレーションを行った時の学生さんがすごくイキイキしていて、体験を通して学んだことが記憶力の定着につながるのを感じました。臨床で活かせる教育がここにあるんじゃないかと。

洲鎌氏:私はもともと、自分が年をとった時にちゃんとした看護師さんにみてもらいたいというのがありまして(笑)そのために教育や後輩育成に興味を持ってましたので、教育に携わる中での池田課長からのお誘いもあり、院内のシミュレーション教育に参加しました。


Q. 研究会の有志として活動するきっかけをお聞かせください

シミュレーション教育を県内に広く伝えたい

池田氏:阿部先生がご尽力されて、シミュレーション教育に対する理解が県内で浸透しつつある時に、先生が東京に戻られることになりました。県内でシミュレーション教育に興味のある教員はたくさんいるので「もっともっと伝えていきたいよね」というのがまずは一つのきっかけです。私としても施設で行っていく中で知っていることを伝えていくことはできても、そこから先に伝えていくことは難しいんですね。なので、阿部先生の力もお借りしながら研究会を通してたくさんの看護職員が学べる場になればいいなと思い、活動させていただいてます。


研究会の様子

Q.研究会に参加して現場に活かせたことはなんですか?

自分自身を振り返り 指導力について考える

池田氏:看護職以外も含めた教育や育成の体制構築に携わる中で聞いた話です。リーダークラスの職員たちが後輩に向き合う時によく出る意見としては、シミュレーション教育で一番キーとなるデブリーフィングについて、何を切り取ってディスカッションに持っていくのかが、すごく難しいというお話をいただきます。
 研究会ではデブリーフィングのケース事例を出して、グループでディスカッションします。学校教員や様々な施設の看護職が集まっている中で、後輩たちに対して時にどう展開するのかを考えます。そして現場に戻った時に感じることは、「後輩にも後輩なりの経験があり、どう感じたのかを引き出していくことがすごく大事だと気づけた。今までは自分たちが伝えていたのは、業務的なタスクの確認であって、この患者さんの看護はどこにあるのかというところまで伝えきれてなかったことに気づかされた」と。そこから「自分の看護ってどうだろう」「自分は何を後輩に教えられるんだろう」という自分自身を振り返る機会になったことはよく聞きます。
 研究会で活動して指導力を考えていく中で、自分の看護観を振り返り自身の原点に戻る良い機会になっているのかなと、参加者の意見を聞いた時に感じます。

洲鎌氏:研究会へは数回参加しました。それまで、院内の研修を実践レベルでもやってはみたものの、なかなか現場に活かせてませんでした。研究会に初めて参加して、阿部先生のシミュレーション教育が衝撃的でした。そこで院内でシミュレーション教育を展開していきたいなと思いました。2年前に教育担当をさせていただく機会があったので、その時に改めてもう一度シミュレーション教育について池田課長と話し合いました。そこから、現場レベルの指導者の教育へ舵を取って1年生を育てていきたいなというところにシフトしました。今はまだ途中ですが、継続して行っています。



今回はここまでです。後半は、院内研修についてご紹介します。

友愛医療センターの外観写真 取材ご協力:社会医療法人友愛会 友愛医療センター
(2020年8月移転時に豊見城中央病院より名称変更)
病床数:378床(再生医療戦略特区許可病床2床含む)
地域医療支援型病院 地域災害拠点病院
基幹型臨床研修病院 沖縄DMAT指定病院
救急告示病院
*2019年度実績
病床利用率:91% 平均在院日数:9.6日
外来患者数:870名/1日平均
入院患者数:344名/1日平均
Writer's Portrait 取材ご協力:
人事部人材開発課 課長 池田 晴美 氏
看護部教育担当統括師長 洲鎌 陽子 氏
看護部新人教育担当師長 岡部 真理子 氏
看護部新人教育担当師長 仲本 エリ子 氏


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